あいつ番外編 逢ってから初めての誕生日

作:サー・トーマス
絵:山野林梧
いもと様サイト記念に

 俺、柳生林太郎。あいつと逢ってあいつと友達になった。
 あいつの目がこの頃気になってきた。男同士なのに、何か変・・・
 そして逢ってから初めての俺の誕生日に・・・

                     

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 この頃意識することがある。
 あいつの目。
 やっちゃん(あいつの悪友)達と騒いでいる時、あいつと目が合うと、あいつははっとして目を泳がし、怖ず怖ずと俺の目を覗く。俺が笑いかけると、何かほっとするようにあいつも相好を崩す(にこにこすること)。
 何か変。
 俺が級友と歩いていると、遠くからあいつが俺達を見ていることがある。ぽかんと口を開けてポプラ並木のベンチに腰掛けて。
 俺のことを見ているのだろうか?
 そいでいて近くに行くと知らん顔したりして。俺に声を掛けられると、顔を紅くして鬼瓦みたいな顔で笑う。

 そうだ。あの顔だ。
 思い出したくもないけど、俺が鬼芦達にレイプされそうになった時、どうしてか分からないけどあいつのあの顔が頭に浮かんだんだ。
 あの時、本当に恐かった。何をされるか分からない恐怖。あいつ等にこれからセックスの奴隷の様に犯される絶望。そんな絶体絶命の時にあいつが笑った顔が浮かんだ。
 その状況にそぐわない平和な気持ちを、あいつの顔を思いだした時感じた。
 それがもう絶対に適わないと思って涙が出た。
 でも次の瞬間、あいつが俺のために現れた時、どんなにうれしかったろう。

 あいつは俺を助けてくれて、一言言って後は何も求めなかった。俺の髪を撫でて、
「りん、日本男児は黒髪だ」
 お礼のためじゃないけど、その日から髪を染めるのをやめた。確かに染料で本来の色を隠すのはどうかなとは思っていた。
 それからだ。
 あいつの目を意識しはじめたのは。最初に大学の近くの喫茶店『サッド・カフェ』で逢った時はホモ小説書いてて変な奴、ぐらいしか思わなかったけど。でもあいつの小説に出てくる古武士に愛される少年て、俺だったら、なんて思ったっけ。
 命がけで愛されるなんて、素敵だ。男とか女とか、そんなことはどうでも良くなる。



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 あいつに助けられてあいつと友達になった。
 あいつの悪友達に紹介されて、彼らとも友達になった。ちょっと変わっててみんなそれぞれ理想を持っている。お互いにそれを大切にしてて見守り合ってるって感じ。
 彼らの中にいるのは凄く心地良い。

 その日、サッド・カフェに行ったらみんな集まってた。もちろん、あいつ、大介も。
 やっちゃんが俺に聞いた。
「りん!お前の誕生日、いつだ?」
 俺はにやっと笑って、
「へへ・・・実は今日だよ!」
「え!ほんとか!」
 SやNも騒ぎ出す。
 俺は甘える様に言った。なにせ、一番年下だからね。
「何かくれる?」
「馬鹿言え!俺たちゃ、他に貢がねばならないお人が居るんだよ!」
 やっちゃん達は恋人に尻に引かれている。
「そうだ!大介なら女もいねえから、こいつに貰えば!」
 みんなぎゃはぎゃはと大笑いだ。あいつは苦笑して、
「俺は金が無いよ!お前等カンパしろよ」
「そりゃ駄目だね!お前に金渡したら、そこらのゲイバーに行って、全部使っちまうに違いねえ。ホモ小説の取材だとか言ってね」
 俺はあいつをちょっと気持ち悪そうな目で見て、
「え〜!・・・そうなの、大介?」
 それでくすっと笑った。
 あいつは顔を真っ赤にして、鬼瓦の様な顔の口を仁王の様に曲げて、腕組みをして上を睨んだ。それを見てまた大笑い。

 その後、俺とあいつは京浜急行で三浦半島を走ってた。俺は長野から出てきて、湘南の長沢にいる爺ちゃんの家に居候している。あいつの下宿は終点の三浦海岸だ。俺の方が先に降りる。
 長沢に着いた。
「大介。じゃ、明日」
 俺が降りるとあいつも付いてきた。
「?」
 俺は振り返ってホームで背の高いあいつを見上げた。
「・・・これ・・・」
 あいつは無印良品の袋を俺に差し出した。
 俺は不思議そうにそれを見る。
「・・・お前に似合いそうなんで買っといたんだ」
「え?」
 あいつは俺にそれを押しつけると、また電車に飛び乗った。ドアが閉まる寸前にあいつは電車の中に入った。でも上着の裾がドアに挟まれてこちらに出てる。
 動けなくなったあいつは首を回して、照れくさそうに俺に手を振った。
 俺もちょっと素っ気なく手を振る。

 でも俺の心は十一月の寒空の中、一気に暖かくなっちゃった。
 あいつ、俺の誕生日になけなしの金でなんか買ってくれた。



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 家に帰って二階の自分の部屋でそれを開けた。爺ちゃんがバースデーケーキがあると言った。後で降りていって一緒に食べよう。
 袋から出てきたのは、綺麗なリボンで飾った小さな箱と手紙。

 誕生日おめでとう!
 君のサッカーへの夢が実現します様に。
 俺も大小説家になってやる!
 俺達の友情がいつまでも続きます様に!
    無一文の衆道小説家の卵より
    林太郎殿
    参る

 俺は吹きだした。やっぱり変な奴!
 それに『参る』なんて大昔の文(ふみ)の書き方じゃない!

 ・・・『俺達』って誰と誰の事だろう?やっちゃん達も入っているのかな?
 箱を開けると紫のバンドが出てきた。俺は首まで伸ばした髪を試合中にまとめるためにバンダナをしたり、スキー用のヘアバンドをしていたけど、これは素敵なシルクにゴムを入れていて極めて伸縮性が高い。
 鏡の前でそれを頭にしてみる。しっくり来る。髪をちょっとバンドの下から引き出してその上に掛かる様にした。女の子みたいに見える。これじゃ髪をまとめる意味がないか。
(・・・ふふ。じゃあいつが見に来る試合の時、嵌めてやろうか・・・)

 そう考えた時、俺は不思議な感覚を胸に覚えた。
 部屋は暖かくTシャツとスポーツ用のスパッツに着替えていたけど、シャツと胸の乳首が擦れている感じ。
 そっとシャツを持ち上げると俺の乳首は勃起していた。寒い外気に晒された時や冷たいシャワーを浴びた時、こうなるけど・・・普段、感じたことはない。
 俺はそっと片方の乳首を突いてみた。
「う・・・ん」
 鏡の中の紫のヘアバンドをした俺は唇を舌で舐めた。下腹も変。
 スパッツの上から陰部を押さえるとペニスが半勃ちしている。俺はスパッツを腿まで下ろすと、柔らかいペニスを摘んだ。左手はたくし上げたシャツの下で左乳首を玩んでいる。
「・・・」
 俺は深い溜め息を吐くと、そろそろとペニスの包茎を剥きだした。
 一週間に一度ぐらいのペースで俺は夢精をする。まだオナニーはしたことがなかった。高校の友達の話でやり方は聞いているけど、自分でやってみたことは無かった。

 夢精したある夜、風呂場に行って精液にまみれた自分のペニスを見た。精液を拭うと、ねっとりした液体が指から筋を引いた。それを少し舐めてみる。薄い塩味がした。ぺっと唾と一緒に吐き出す。一億匹の俺の分身。
 ゆっくりと皮を剥いて亀頭を全部出した。ピンクのきれいな桃の様な果実が出てきた。
 まさに亀の頭の様なきめ細かい皮膚が妖しく濡れている。
 その首の部分に白い恥垢が溜まっていた。ものの本にはこれが凄い異臭を放つので洗うべしとあった。でも普段は皮の中にあるものだし、洗うのは恐かった。
 勇気を出してお湯を掛けた。

「ひゃ!」
 シャワーのお湯が熱すぎた!



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 そんなことを思い出しながら、俺はペニスの皮をめくった。
 凄い罪悪感。俺は何をしているんだろ?
 あいつにヘアバンドを貰っただけなのに、こんなに淫靡な興奮をするなんて。
 俺はあいつに何をされたいんだろ?
 鬼芦が俺にしたかったこと?
 違う!あいつがそんなことをするわけがないだろ!
 ・・・俺、おかしくなった!変態だ!

 でも俺はもう自分が止められなかった。
 鏡の前で乳首を摘み、ペニスの皮を剥いたり、もとに戻したりし出した。
 ペニスがぐんぐん大きくなる。
 固い!
 俺は指先に硬直した海綿体を感じた。強く皮を押さえてぐいと引っぱる。そしてまた皮を亀頭に被せていく・・・これで良いんだろうか?オナニーの仕方なんて知らないのに・・・

 だんだん、亀頭の傘の部分がむず痒くなってきた。自分の息が荒くなる。自然に股を絞めた。睾丸が圧迫され、腰を少し引く。そして皮をめくる周期で腰も前後させだした。
「あ・・・あん・・・」
 俺の頭は茫然となってきた。でも・・・俺の行為はオスのものではなかった。
 女性に突き入れるのではなく、俺自身が突き入れられる感覚に酔っていた。口を開けて舌を出し誰かの舌を求めていた。
 刺激を与えているペニスも、誰かの逞しい手で強く握られ扱かれるのを待っている様だった。

 誰かが・・・俺の後ろから・・・乳首とペニスを・・・そしてその熱いものを俺の中に!
「あ!・・・だいす・・・!」

 俺は思わずその名前を飲み込んだ!駄目だ!絶対言っちゃいけない!
 きっと嫌われる!
 こんな俺を・・・知られたら・・・

 俺は仰け反り、ペニスから大量の精液を射精していた。
 誰かのためにこれを出したい・・・
 でもそんなことはあり得ない・・・

 俺の独りぼっちの誕生日・・・大介、有り難う。

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