りんと主水は再び興福寺を訪れていた。阿修羅像はりんのお気に入りとなっていた。夏の終わりに来てからもう紅葉のころになっていた。
 京で知り合った本阿弥光悦と角倉素庵は丁度、大阪にいてりん達に来いと誘っていた。
 彼らは興福寺から大阪の方へ下りながら斑鳩の地を踏んだ。川の畔を散策していた。
 
 川の両側の深紅の紅葉。

「竜田姫・・・」
 りんの小さな呟きを主水は聞き取り、
「おお、ここは竜田川じゃ。その神、竜田姫は紅葉の化身じゃ。よく知っているな」
 りんは顔を紅くして、
「・・・りんごさんがいつか教えてくれたんです・・・」
 女忍者のりんごは、紅葉の下のりんを見て竜田姫に喩えたのだが。


ちはやぶる 神代もきかず 龍田川 からくれなゐに 水くゝるとは


 この在原業平の歌の真意はすでに藤原定家でさえも分からなかった。紅葉の色に糸を括り染めにするという説と、紅葉の紅の下を水が潜って行く様とする説がある(定家は後者)。

 りんは主水が誦(ず・じゅ)するのを聞きながら響きが美しいと思った。

 陶然と河面に映る深紅の流れを見るりん。
 そのお尻に横に立っていた主水はそっと手を伸ばした。
 可愛い顔に少し不釣り合いに見える、袴を履いてない腰と小袖の下の大きな臀部。
 その瞬間、りんのお尻と主水の手の間に紅葉の小枝と葉が差し込まれた。

「主水様!俺は『友』ではないのか?」
 笑いながら咎めるりんの顔。可愛い。やはり阿修羅には気付かれたかと苦笑い。
「はは・・・悪い手じゃ!」
 主水はりんの走っていく後を追いながら自分の手を抓るのであった。

「すけべえな主水様!唐丸さんに言いつけようっと!」
「ま・・・まて!それだけは・・・」

 



2次創作「りんの物語 竜田姫」
作:サー・トーマス
絵:山野林梧

山野林梧様のサイト「夢色奇譚」の「創作」で発表されたSSに妄想して・・・
2008/11/12初稿


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